HOME 2004/11/08 1665510.doc 科目名細胞生物学(03) 1/3 =細胞生物学(‘03)=(TV 〔主任講師: 永田和宏(京都大学教授)〕 〔主任講師: 森正敬(熊本大学教授)〕 〔主任講師: 河野憲二(奈良先端科学技術大学院大学教授)〕 全体のねらい 生命の基本単位である細胞は、それ自体ひとつのミクロコスモスである。おどろくべき巧妙な仕組みで、生命維持に必要 なすべての装置を備えている。細胞の内部のさまざまの装置と、それらがいかに連絡しながら細胞社会を形成し、一個の個 体を作っているか。また、細胞は分裂し、移動し、分化し、さらにがん化したり、細胞死さえプログラムされている。その ようなダイナミックな細胞の世界を分子のレベルで覗いてみよう。 回テーマ内容 執筆担当 講師名 (所属・職名) 放送担当 講師名 (所属・職名)
1 細胞とは何か: 細胞には大きくわけて、原核細胞、真核細胞の区別がある。 また、我々人間には、200 種類以上の細胞がそれぞれの組織 や器官を形作っている。植物にはまた植物特有の細胞が存在 する。それら細胞はどのように進化してきたのか。主として、 細胞の種類と構造、そして進化について講義する。 永田和宏 (京都大学教 授) 永田和宏 (京都大学教 授)
2 細胞内部の構築: 真核細胞の内部にはオルガネラと呼ばれる細胞小器官が発 達し、それぞれ役割分担が決まっている。それらはどのよう にして作られたと考えられているか、また個々のオルガネラ の働きは何か。どの装置が欠けても細胞は生きていけないが、 お互いにどのように助け合いながら、細胞としての生命を維 持しているかについて講義する。 森正敬 (熊本大学教 授) 森正敬 (熊本大学教 授)
3 細胞で働く分子たち: 細胞内では、高分子から低分子までさまざまな分子がそれ ぞれの役割を果たしている。核酸、脂質、炭水化物、ATP な どの低分子、種々の金属イオン、アミノ酸やタンパク質など、 個々の分子の構造と細胞内での役割について講義する。 同上同上
4 タンパク質の合成: 生命活動の基本はタンパク質である。遺伝子に組み込まれ たタンパク質の情報が、いかに読み出されてタンパク質が作 られるのか。DNA⇒(転写)⇒RNA⇒(翻訳)⇒ポリペプチ ドという、タンパク質の誕生までの過程を、細胞という場の 中でリアルに体験できるよう講義をする。 永田和宏永田和宏
5 タンパク質の機能 と品質管理: タンパク質は、遺伝情報に従って、ポリペプチドに翻訳さ れただけでは機能を持つことができない。ポリペプチドは、 正しく折り畳まれて正しい構造をとる、そして正しい場に運 ばれて初めて、本来の機能を発揮する。細胞は、もしタンパ ク質が正しい構造をとりえなかった場合に、それらを処分し たり、再生するような品質管理の機構を備えていることが明 らかになってきた。 同上同上
6 膜の構造と膜透過: 細胞は膜によって囲われることによって、一個の生命を維 持しているが、細胞内部においても、さまざまのオルガネラ は、互いに膜によって区画されている。タンパク質をはじめ とする種々の物質は、膜を通っていろいろのオルガネラに運 ばれる。膜の構造、またダイナミックな膜の動きなどを学ぶ。 森正敬森正敬 2004/11/08 1665510.doc 科目名細胞生物学(03) 2/3 回テーマ内容 執筆担当 講師名 (所属・職名) 放送担当 講師名 (所属・職名)
7 タンパク質の細胞 内輸送と局在: タンパク質は作られた場から、それが機能する場へと輸送 されなければならない。輸送には荷物の運搬と同じく、タン パク質にタグが付けられて輸送先が指定される。また、どこ かのオルガネラにとどめるためにも、専用のタグが付けられ てとどまる場所を指定される。このようなタンパク質の輸送 と、輸送に働いているメカニズムを考える。 河野憲二 (奈良先端科 学技術大学院 大学教授) 河野憲二 (奈良先端科 学技術大学院 大学教授)
8 エネルギー変換と ミトコンドリア: 真核細胞においてエネルギーの供給は、ミトコンドリアに おいてなされる。ミトコンドリアのエネルギー供給に関する 役割と、エネルギー物質であるATP が作られるまでの反応を わかりやすく解説する。また、ミトコンドリアDNA の構造と はたらきについて学ぶ。 森正敬森正敬
9 細胞骨格: 細胞内には複雑な繊維状骨格のネットワークが張りめぐら されている。これを細胞骨格と呼ぶ。細胞には3種類の太さ の異なる繊維があり、微細繊維、中間径繊維、微小管と呼ば れている。これらは細胞の形を維持するだけでなく、細胞同 士の接着や、細胞の移動や貪食、また、筋肉細胞においては 筋収縮などを行っている。 永田和宏永田和宏
10 細胞のシグナル伝達: 細胞は、増殖、分化、がん化、細胞死などを誘導するさま ざまのシグナルを受けとり、それに応答する。シグナルは、 何段階ものカスケードを経て、最終的には遺伝子の発現を制 御する。これらのシグナル伝達においては、分子のリン酸化 が大きな役割を果たしている。このシグナル伝達のプロセス について講義する。 河野憲二河野憲二
11 細胞周期: 生体中の細胞には、絶えず分裂を繰り返している細胞と、 分裂は行わず休止している細胞がある。分裂細胞では、DNA 合成と細胞分裂が繰り返され、その周期は厳密に調節されて いる。細胞周期の調節機構には、それに関わる分子のリン酸 化や分解がきわめて巧妙に制御されているが、その調節機構 について勉強する。 同上同上
12 細胞分裂: 細胞分裂は、染色体の凝縮から、その分配、そして二つの 娘細胞へわかれるという過程を経てなされるが、染色体の分 配には、微小管が、細胞分裂にはアクチンを主成分とする微 細繊維がそれぞれ主役を演じている。それら細胞骨格タンパ ク質の機能を制御する機構が明らかになってきた。 同上同上
13 細胞間のコミュニ ケーション: 細胞は生体の中で、一個だけが孤立して存在しているので はない。細胞同士は互いに接着し、また細胞外マトリクスと 呼ばれる微小環境と接している。これら細胞接着、細胞外マ トリクスとの相互作用によって、互いに情報のやり取りをし ている。細胞接着の方法と、その情報交換の機構について解 説する。 高橋淑子 (奈良先端科 学技術大学院 大学助教授・ 理化学研究所 チームリーダ ー) 高橋淑子 (奈良先端科 学技術大学院 大学助教授・ 理化学研究所 チームリーダ ー) 2004/11/08 1665510.doc 科目名細胞生物学(03) 3/3 回テーマ内容 執筆担当 講師名 (所属・職名) 放送担当 講師名 (所属・職名)
14 発生と分化: 生体中のすべての細胞は、一個の受精卵から発生してきた ものである。最初は、一個の細胞であったものが、分裂と分 化を繰り返しながら、次第に性質を異にしたさまざまの細胞 を作り、組織、そして器官を形成する。時間的・空間的に厳 密にプログラムされた、発生・分化という複雑な現象のアウ トラインを解説する。 高橋淑子高橋淑子
15 がんと細胞死: 細胞の増殖・分化の制御機構に乱れが生じ、細胞が異常な 分裂を示すようになったものががんである。いっぽう、細胞 はその役割を終えたとき、またある種の刺激が加わったとき、 自らを殺す機構をも持っている。あるいは、発生の途中で不 要になった細胞は死ぬようにあらかじめプログラムされ、ア ポトーシスと呼ばれる。がんと細胞死という細胞の生死に関 わるふたつの側面について講義する。 永田和宏 森正敬 永田和宏 森正敬