HOME - 1 - =地域文化研究V(‘02)=(TV) −ヨーロッパの文化と社会〜イギリスを中心に〜− 〔主任講師: 山内 久明(放送大学教授)〕 〔主任講師: 木畑 洋一(東京大学大学院教授)〕 〔主任講師: 草光 俊雄(東京大学大学院教授)〕 全体のねらい ヨーロッパ連合はすでに現実となり機能しているが、他方において言語、文化、社会 に目を向けると、国家を単位とする 多様な個別が存在することも事実である。この講義では、ヨーロッパの文化と社会 を、イギリスに焦点を合わせて、そこで、 民族、人種、地域、階級などさまざまな要素が複雑に絡む仕組みと歴史的背景を考察 する。 回 テーマ 内 容 執筆担当 講師名 (所属・職名) 放送担当 講師名 (所属・職名)
1 はじめに ―中心と周縁 イギリスは自らその一員であるヨーロッパ連合と不即不離 の関係にある。ヨーロッパ大陸に中心を置いて見るとイギリ スは周縁に位置するが、イギリスのなかで、イングランド対 ケルト文化圏、南と北など、地理的・地域的多様性に基づく 中心と周縁の関係が存在する。 山内 久明 (放送大学教 授) 木畑 洋一 (東京大学大 学院教授) 草光 俊雄 (東京大学大 学院教授) 山内 久明 (放送大学教 授) 木畑 洋一 (東京大学大 学院教授) 草光 俊雄 (東京大学大 学院教授) 2 自然と景観の保全 18 世紀中葉のイギリスの田舎における「囲い込み」と、産 業革命の結果としての産業都市の成立は、イギリスの田舎と 都会を大きく変貌させた。環境破壊に対する反省は環境保全 運動を促し、顕著な一例がナショナル・トラストである。同 時に、都市計画が発達した。 山内 久明 山内 久明
3 民族と人種の融和 イギリスという国民国家がどのようにできあがってきたか を、ブリテン島、アイルランド島への人の移動、イングラン ドと「ケルト辺境」の関係に着目して検討し、さらにイギリ ス帝国の形成と崩壊の過程が、イギリスの人種・民族構成に いかなる影響を及ぼし、国民国家としての姿を変容させたか を問う。 木畑 洋一 木畑 洋一
4 ことばの標準化と 多様性 アングロ・サクソン時代のゲルマン的要素と、ノルマン征 服以後のフランス的要素との融合による英語の豊富化。教育 制度やメディアを通して行われた英語の標準化。それにもか かわらず存続する地域と社会的差違による英語の多様性。言 語政策の問題、等々。 斎藤 兆史 (東京大学大 学院助教授) 斎藤 兆史 (東京大学大 学院助教授)
5 政治と女性 議会制民主主義を育んだ国というイメージのイギリスであ るが、女性が参政権を得たのは、イギリス帝国の中のニュー ジーランドなどよりはるかに遅く、第一次世界大戦末期のこ とであった。女性の社会的地位の変遷と女性参政権獲得運動 の展開を歴史的に追い、イギリス政治の中での女性の位置を 探る。 木畑 洋一 鈴木 実佳 (静岡大学助 教授) 木畑 洋一 鈴木 実佳 (静岡大学助 教授)
6 経済的繁栄と停滞 産業革命の先進国、金融の中心地、「世界の工場」として 世界経済を先導したイギリスも、20 世紀に入るとアメリカと ドイツに追いつかれ、第二次大戦終結とともに植民地も失い、 停滞。戦後の福祉国家の確立、サッチャー政策による福祉打 ち切り、ビッグ・バンと続く。 草光 俊雄 草光 俊雄 - 2 - 回 テーマ 内 容 執筆担当 講師名 (所属・職名) 放送担当 講師名 (所属・職名)
7 社会構造と文化 いわゆる「階級」問題の複雑さは、中世の大土地所有者と しての貴族に遡る土地所有形態に根ざした身分関係と、近世 以後の流動的な経済活動による貧富の差に基づく階属性との 混在に起因する。階級分化とは何か、教育は階級構造を流動 的にするかどうか、等々の問題。 草光 俊雄 草光 俊雄
8 イギリスの医療 イギリスの近代科学に対するアイザック・ニュートンの貢 献はいまさら言うまでもないが、それと並行してジョン・ロ ックに代表される経験論哲学の伝統の重要性が挙げられる。 また、20 世紀前半、ヴィトゲンシュタインを擁したケンブリ ッジの哲学的隆盛など。 鈴木 晃仁 (慶應義塾大 学助教授) 鈴木 晃仁 (慶應義塾大 学助教授)
9 個性を伸ばす学校 教育 イギリスの初等教育制度が中央政府の政策によって統一さ れたのは1870 年の教育法によってであり、それ以前は宗教別 の教会と私学に任されていた。義務教育年齢が延長され、機 会均等が普及するのは第二次大戦後である。公立と私学、カ リキュラム、試験制度、等々。 小澤 周三 (東京外国語 大学教授) 小澤 周三 (東京外国語 大学教授)
10 古くて新しい大学 イギリスの大学は中世の大学としてのオクスフォードなら びにケンブリッジ、スコットランドの諸大学、産業革命に呼 応する19 世紀の諸大学、第二次大戦後の社会の平等化に基づ く新大学、1992 年に昇格した最新の大学などがある。理念と 制度の現在と歴史的背景。 山内 久明 山内 久明
11 国家と宗教 アングロ・サクソン時代に遡るキリスト教伝来、ローマ・ カトリック教会直轄の中世キリスト教、ヘンリー8 世による宗 教改革と英国国教会の成立、国教会から離反した非国教主義 の諸宗教。宗教は信仰の問題であると同時に、文化と社会の 動態に深く関わっている。 同 上 同 上
12 文学とメディア 文化と社会の総体のなかでの文学――そのつくり手と受容 者の社会的位置づけ。さらにそこから、いわゆる純文学に隣 接するメディアや、ポピュラー・カルチャー、書き手として の女性、こどもの文化など、問題は尽きない。 山内 久明 佐藤 和哉 (日本女子大 学助教授) 山内 久明 佐藤 和哉 (日本女子大 学助教授) 鈴木 実佳
13 表象文化 ロンドンを中心とする夥しい数の劇場で、シェイクスピア をはじめとする古典と現代劇が共存する活力にみちた演劇活 動。ホガース、パーマ、ターナー、カンスタブル、ラファエ ル前派などの絵画。高度な演奏活動と音楽的創造性との相関 性、等々。 草光 俊雄 草光 俊雄 ゲスト 菅 靖子 (埼玉大学助 教授)
14 イギリスと世界 EU の一員でありながらEU 統合の深化に対しては慎重な イギリス、かつての植民地であった英連邦諸国との絆も持続 するイギリス、同時にアメリカ合衆国との「特別な関係」を も重視するイギリス――ユニークな多方位外交を進めるイギ リスの、世界の中での位置を歴史的に探る。 木畑 洋一 木畑 洋一
15 イギリスと日本 ――おわりに 前回のテーマの延長としてイギリスと日本との関係文化、 社会、外交などに即して考えるとともに、おわりにあたり全 体をふたたび振り返り、まとめを行なう。 山内 久明 木畑 洋一 草光 俊雄 山内 久明 木畑 洋一 草光 俊雄