HOME 2005/01/12 8920133.doc 1 = 地球環境科学(‘05)=(TV) 〔 主 任 講 師: 木村 龍治(放送大学教授)〕 〔 主 任 講 師: 藤井 直之(名古屋大学大学院教授)〕 〔 主 任 講 師: 川上 紳一(岐阜大学教授)〕 全体のねらい 地球は、大気、海洋、地殻、マントル、核などのサブシステムが集まった一つの巨大 なシステムである。 地球を構成するサブシステムは構成物質が異なるため、さまざまな時間スケールで変 動している。また、現 在の地球環境は、46 億年にわたる地球の歴史的産物である。地球システム科学の立 場から、地球のダイナミ クスの研究方法や歴史解読のアプローチを講義し、地球環境と人間の関わりについて 考察していく。 回 テーマ 内 容 執筆担当 講師名 (所属・職名) 放送担当 講師名 (所属・職名)
1 地球システムからみ た地球環境

私たちは変動する地球環境の中で生きている。天気の移り変わりや異常気象は、変動する地球環境を身近に感じることが できる現象である。気候の変動には数十年から数百年スケー ルのものから、10 万年周期の氷期-間氷期サイクルまである。 さらに、プレート運動による大陸の離散集合の歴史は数億年 といった長い時間スケールの中で起こる。さまざまな時間ス ケールで変動する地球環境を理解するには、地球をシステム として捉える地球システム科学の考え方や研究手法が重要で ある。 木村 龍治 (放送大学教 授) 藤井 直之 (名古屋大学 大学院教授) 川上 紳一 (岐阜大学教 授) 木村 龍治 (放送大学教 授) 藤井 直之 (名古屋大学 大学院教授) 川上 紳一 (岐阜大学教 授)

     
     
     

2 地球システムの成 立と特異性

地球環境は46 億年前の太陽系の形成に始まる長い時間の 経過の中で変化してきた歴史的産物である。地球には海があ り、多様な生物が生息しているユニークな惑星である。惑星 形成過程や生命の起源論、グリーンランドやオーストラリア で進められている初期地球環境の地球史的研究の現場を紹介 しつつ、地球システムの成立とその特異性について考察する。 川上 紳一 川上 紳一


3 気象システム

毎日の天気予報に深く関係する気象の変化のメカニズムに ついて述べる。現在の天気予報は地球全体の大気循環のコン ピューターシミュレーションを基礎にして行われているが、 シミュレーションの初期値を作成するために気象観測が必要 である。気象はグローバルな大気循環からローカルな現象ま で、さまざまなスケールの現象が階層構造をなしている。特 に集中豪雨など気象障害をもたらすメソスケールの気象は特 別なプロジェクト研究が必要である。現代の気象研究の最前 線を紹介する。 吉崎 正憲 (気象庁気象 研究所主任研 究官) 吉崎 正憲 (気象庁気象 研究所主任研 究官) 木村 龍治


4 海洋システム

海洋は地球環境に大きな役割を占めているが、人間が陸地 に住んでいるために、その実態を明らかにするのは容易では ない。しかし、海洋は陸地と同じような豊かな生物環境を構 成している。海洋に関する物理、生物、化学、地学などのさ まざまな側面を現代の海洋学はどのような方法で研究するの であろうか。特に、海洋研究船による現代の海洋調査につい て述べる。 小池 勲夫 (東京大学海 洋研究所長) 小池 勲夫 (東京大学海 洋研究所長) 木村 龍治 2005/01/12 8920133.doc 2 回 テーマ 内 容 執筆担当 講師名 (所属・職名) 放送担当 講師名 (所属・職名)


5 近未来の海洋観測

人工衛星の発展やIT 革命によって、従来は不可能であった 方法で、海洋の観測ができるようになった。従来は、海洋研 究船による観測が主流であったが、現在、国際協力によって、 無人の漂流ブイによる海洋観測が全世界で展開されている。 そのプロジェクトを「アルゴ計画」という。また、エルニー ニョのモニターのために、赤道太平洋で係留ブイによる観測 が実施されている。それらの近未来を指向した海洋観測を、 プロジェクトに関わっている研究者が説明する。 湊 信也 (海洋研究開 発機構アルゴ グループサブ リーダー) 岡 正太郎 (海洋研究開 発機構アルゴ グループ研究 員) 木村 龍治


6 気候変動I

地球は常に太陽から、ほとんど一定の光を受け続けている にもかかわらず、大気環境が常に変動しているのはなぜであ ろうか。変動には、さまざまな周期が存在する。短い変動は、 雷雲や台風などの突発的な気象擾乱の発生による。天気の変 化は、中緯度帯に形成されている偏西風の流体力学的な不安 定による。季節変化は、太陽放射量の変化による。それらの 原因はかなり解明されているが、1 年より長い周期の変動も ある。数年の変動はエルニーニョ現象に関係している。それ より長い気候の変化は、海洋の変動と関係が深い。大気環境 の変動特性について考察する。 木村 龍治 木村 龍治


7 気候変動U

1988 年以来、地球環境問題が大きな社会問題になった。こ れをきっかけにグローバルな気候変化の研究が盛んになり、 コンピューターシミュレーションによって、将来の気候予測 を行うことが実施されている。東京大学気候システム研究セ ンターは、日本の気候研究の中心的存在であるが、その所長 を長く務めた住教授が現代の気候研究の最前線について語 る。 住 明正 (東京大学教 授) 住 明正 (東京大学教 授) 木村 龍治


8 生物圏と 地球システム

生物圏も地球システムの重要な構成要素である。深海底熱 水生態系、珊瑚礁、干潟などの生態系を紹介し、それらが地 球環境とどのように関わっているかを講義する。特に、地球 表層の炭素循環に対する海洋微生物の役割について考察す る。 川上 紳一 川上 紳一


9 固体地球と表層環境の カップリング

過去の大規模火山噴火の事例紹介、その気候変動との関連 性を論じる。さらに、地球の火山活動は、プレートテクトニ クスと密接に関わっていることを示す。また、大陸移動、超 大陸の形成・分裂サイクルと表層環境、スーパープルームの 活動などを講義する。 藤井 直之 藤井 直之


10 マントル ダイナミクス

プレートテクトニクスの原動力やプレート内火山活動を理 解するには、地球内部ダイナミクスを詳しく研究する必要が ある。地震波トモグラフィーによる地球の3次元構造モデル の研究、地球内部物質科学の知見を用いたその解釈、さらに マントル対流のコンピュータシミュレーションの結果を照会 し、地球内部の変動のしくみを解説する。 藤井 直之 藤井 直之 2005/01/12 8920133.doc 3 回 テーマ 内 容 執筆担当 講師名 (所属・職名) 放送担当 講師名 (所属・職名)


11 地球磁場変動

地球には磁気圏がとりまいている。地球磁場の特徴とその 時間変動を論じる。また、地球磁場の逆転現象、地質時代の 地球磁場を研究する古地磁気学の原理を講義する。地球磁場 の変動と地球環境の関連性を論じる。 藤井 直之 藤井 直之


12 地球史解読

地球の歴史を解読するには、地層や岩石に刻まれた過去の 出来事を読み解く必要がある。K/T境界の粘土層の分析結果 をもとに提唱された恐竜絶滅の天体衝突仮説を解説する。こ の仮説が地球史研究に与えたインパクトを紹介する。古生代 末の生物大量絶滅事件に関する研究にも言及する。また、南 オーストラリアの潮汐リズムを記録した堆積岩から地球自転 周期や月軌道を復元する研究を現地での取材を含めて紹介 し、地球史の解読のアプローチを紹介する。 川上 紳一 川上 紳一


13 地球を変えた 光合成

地球が誕生したころの大気には、ほとんどまったく酸素が なかった。現在の地球大気の20%は酸素分子でできており、 性質が大きく変化した。その移り変わりを記録したさまざま な堆積岩から地球大気の変遷を読み解いていく。地球大気に 酸素をもたらした最初の微生物として注目されているシアノ バクテリアとその構築物であるストロマトライトについて、 南オーストリア、現生ストロマトライト、縞状鉄鉱床などの 露頭の様子を紹介して、解説する。 川上 紳一 川上 紳一


14 全球凍結事件と多細胞動 物の出現

約8 億年前から6 億年前の氷河時代の地層が世界各地に分 布する。それらが堆積した緯度を推定する古地磁気学、氷河 堆積物と縞状炭酸塩岩や縞状鉄鉱床の奇妙な組み合わせ。そ の謎解きから提唱された全球凍結仮説。そして、これらの氷 河時代が終わって突然登場する多様な多細胞動物。全球凍結 仮説を巡る研究現場(南オーストラリアの縞状鉄鉱床、氷河 堆積物の露頭紹介)をレポートし、地球史解読の研究の進め 方、検証可能な作業仮説の重要性などを論じる。46 億年の地 球と生物の歴史を振り返り、変動する地球環境と生物進化の 関連性を明らかにする。 川上 紳一 川上 紳一


15 地球環境と人類の 未来

地球環境変動を地球システム科学のアプローチで研究する 意義を総括する。また、地球環境と生物進化から私たち人類 が歴史的存在であることを確認する。人類の出現とその地球 環境への影響をグローバルかつ地球史的に捉え、多様な生物 との共存していくためには何をなすべきか考察する。また、 地球環境の理解には、地球科学の研究が不可欠なことを、オ ゾン層の破壊など具体例をもとに示す。 木村 龍治 藤井 直之 川上 紳一 木村 龍治 藤井 直之 川上 紳一----