HOME - 1 - =物質の科学・有機高分子(‘02)=(TV 〔主任講師: 西敏夫(東京工業大学大学院教授)〕 〔主任講師: 讚井浩平(上智大学教授)〕 〔主任講師: 平川暁子(放送大学名誉教授)〕 全体のねらい 有機高分子は、私たちの生命・生活に密接に関係し今後もその重要性は増すであろう。本科目では高分子とは何かから始 め、有機化学の基礎として有機物質の構造・反応を述べ、重合による高分子の生成について説明する。さらに高分子の構造・ 物性・加工・社会との係わりなど将来への展望を含めて有機高分子物質の総合的な把握を目指す。 回テーマ内容 執筆担当 講師名 (所属・職名) 放送担当 講師名 (所属・職名)
1 高分子とは何か: 高分子とは何かについて、天然高分子(植物・動物)を例 にとり説明すると共に、日常生活にかかせない合成高分子に ついても具体的に紹介する。高分子の概念、合成高分子の開 発、生体高分子を概観したあと、本科目の講義の構成を説明 する。 西敏夫 (東京工業大 学大学院教 授) 西敏夫 (東京工業大 学大学院教 授)
2 有機化合物の構造: 多様な有機化合物は、炭素−炭素間の結合が骨格を作り、 それに各種の官能基が結合している。この回では、炭素間の 結合の特徴・炭素間結合と官能基の種類による化合物の分 類・分子の立体構造など、有機化合物を学ぶ際の基本的な事 項を説明する。 平川暁子 (放送大学名 誉教授) 平川暁子 (放送大学名 誉教授)
3 有機化合物の反応 (1) 置換反応: 多様な有機化合物の構造と反応性の関係を統一的に理解す るには、反応機構にもとづいて整理するとよい。この回では 置換反応について、脂肪族炭素上およびカルボニル炭素上の 求核置換、芳香族の求電子置換、アルカンのラジカル置換な どについて説明する。 井上祥平 (東京大学名 誉教授) 井上祥平 (東京大学名 誉教授)
4 有機化合物の反応 (2) 付加反応と脱 離反応: 付加反応と脱離反応を、反応機構にもとづいて整理して説 明する。アルケンへの求電子付加、カルボニル化合物への求 核付加、アルケンへのラジカル付加、脱離反応によるアルケ ンなどの生成について述べる。付加・脱離反応と置換反応の 関係についても触れる。 同上同上
5 有機化合物をつくる: 有機化合物は一般に基本的な反応を組み合わせた多段階の プロセスでつくる。ここでは日常生活に関係の深い合成繊維 の原料や染料・医薬品など、有機化学製品の例をいくつかあ げ、それらがどんな反応を使って合成されるかを、前回まで を復習しながら説明する。 同上同上
6 高分子生成反応: 高分子生成反応を有機合成反応の延長としてとらえ、高分 子量体を得るための注意を述べる。次に高分子生成反応を逐 次反応と連鎖反応に大別し、それらの特徴をわかり易く解説 する。両反応における分子量・分子量分布の経時変化の違い などを例に説明する。 讚井浩平 (上智大学教 授) 讚井浩平 (上智大学教 授) - 2 - 回テーマ内容 執筆担当 講師名 (所属・職名) 放送担当 講師名 (所属・職名)
7 重縮合・重付加: 重縮合を例に逐次重合の動力学について説明する。次に重 縮合の特徴をナイロン・ポリエステル等の代表的な高分子の 合成を例に解説し、界面重合によるナイロン610 の合成を紹 介する。また重付加についても、ポリウレタン・ポリ尿素の 合成反応やフェノール樹脂などの熱硬化性樹脂の反応を示し て、その特徴を解説する。 讚井浩平讚井浩平
8 ラジカル重合・イオ ン重合: 活性種が二重結合を攻撃して新たにσ結合が生成すると、 炭素−炭素結合が伸びていく重合が連鎖的に起こり、短時間 で高分子量のポリマーができることを、わかり易く解説する。 それぞれの活性種とモノマーとの反応性や重合の特徴を、実 験も含めて解説する。 同上 讚井浩平 ゲスト: 澤本光男 (京都大学大 学院教授)
9 配位重合・開環重合: 配位重合では、立体規則性の優れたポリマーが得られ、と くにZieglerNatta 触媒による立体特異性重合の機構を、分 子模型を用いて解説する。また、開環重合のモノマーの反応 性を各活性種について説明する。最後に、リビング重合につ いても簡単に触れる。 同上同上
10 酵素・微生物による: 高分子の合成と分解 酵素・微生物を用いた立体規則性の高分子の合成および分 解反応について、例を示しながらわかり易く説明する。得ら れた高分子の構造と生分解性などの特徴についても紹介す る。さらに、これらの重合で得られた高分子、特にバイオ ポリエステルの応用についても触れる。 讚井浩平 土肥義治 (理化学研究 所理事) 讚井浩平 土肥義治 (理化学研究 所理事)
11 高分子の構造: 高分子の構造について、原子分子オーダーから巨視的なオ ーダ−まで(構造単位の立体化学、一次構造、二次構造、結 晶・非晶・液晶・球晶・ミクロ相分離などの高次構造)を、 構造形成機構を含めて、CG を多用して、わかりやすく説明す る。特に、結晶化、相分離について重点を置いた。西敏夫 (東京工業大 学大学院教 授) 西敏夫 (東京工業大 学大学院教 授) ゲスト: 奥居徳昌 (東京工業大 学大学院教 授) 橋本竹治 (京都大学大 学院教授)
12 高分子の力学的 性質: 高分子の力学的性質の発現(ゴム・繊維・フィルムなど)に は高分子の構造の何がポイントかについて、有機分子の内部 回転と物性・ゴム弾性・ゲルの物性・超延伸などを例にとって 説明する。弾性率・強度・伸び・衝撃強度などと高分子の構 造がどう関係するかも示す。特に、ゲルについて重点を置 いた。 同上 西敏夫 ゲスト: 長田義仁 (北海道大学 副学長) - 3 - 回テーマ内容 執筆担当 講師名 (所属・職名) 放送担当 講師名 (所属・職名)
13 高分子の分子運動 と物性: 有機分子の分子運動と緩和現象・粘弾性・ガラス転移・結 晶化と物性などについて、CG・実験を含めて、わかりやす く説明する。またシミュレーションのロケも取り入れながら 解説する(具体的な例としては免震ゴムの性質など) 西敏夫 西敏夫 ゲスト: 土井正男 (東京大学大 学院教授)
14 高分子の応用: 前回までの講義内容の応用として、高分子の成型加工・機 能性高分子・導電性高分子・強誘電性高分子・生体適合性高 分子・プラスチック光ファイバーなどについて、原理の説明、 研究室・研究所のロケを行い、生活に密着している高分子の 全体像を示す。特に、プラスチック光ファイバーについて 詳しく説明する。 西敏夫 西敏夫 ゲスト: 小池康博 (慶應大学教 授)
15 高分子と地球環境: 高分子と社会とのかかわり、リサイクル、グリーンケミス トリーなど、大きな枠組みでとらえたとき、我々は今後高分 子をどう利用していくべきかを考えるように講義を締めくく る。生分解性ポリマー・生物を利用した高分子の生産などの 現状と意味についてもふれる。 西敏夫 佐伯康治 (元・新第一 塩ビ( 株) 社 長) 西敏夫 佐伯康治 (元・新第一 塩ビ( 株) 社 長)