HOME 2003/11/15 1654519.doc 1 =中世日本の物語と絵画(‘04)=(TV 〔主任講師: 佐野みどり(学習院大学教授)〕 〔主任講師: 並木誠士(京都工芸繊維大学教授)〕 全体のねらい 古来より物語はさまざまな形式、技法で造形化されてきた。物語はヴィジュアルなイメージとともにあ ることで、いっそう親しみをましたのである。そのような物語の造形を味わい、その表現の工夫や享受 のあり方、制作の社会的意図などを、具体的に作品に則して考察していきたい。そもそも物語文学が美 術という視覚テクストとして表わされる背景には、視覚テクストの<物語る力>への期待がおおいに作 用していたに違いない。本講義では、とくに中世の絵巻を中心に、様式変遷を辿りつつ、主題の選択意 志や物語る仕組み、その社会的機能なども取り上げ、視覚による<物語る力>を再考し、物語享受の諸 相を眺めていきたい。 回テーマ内容 執筆担当 講師名 (所属・職名) 放送担当 講師名 (所属・職名)
物語と絵画古代〜中世に置いて、日本では物語がどのように享受されたの か、中でも物語を可視化する物語絵画に焦点をあて、物語絵画 の様相(形態や主題)と享受の有り様を概括し、さらに平安時 代の物語環境の具体的な様相を言説から探る。 佐野みどり ( 学習院大 学教授) 佐野みどり (学習院大学 教授)
2 絵巻の主題と形式物語絵画の中心的メディアといえる絵巻物の形式を作品に則 して分類考察し、絵巻がどのような構造特性をもっているのか を考える。 華厳縁起絵巻や伴大納言絵巻、信貴山縁起絵巻などを主たる例 として、絵巻の時間表現の工夫を分析する。 同上同上
3 絵巻の時間と空間 〜信貴山縁起絵巻 と伴大納言絵巻〜 信貴山縁起絵巻と伴大納言絵巻、それぞれの表現特性を解析 し、物語の時間と空間をどのように可視化するかという画家の 工夫を考える。同上同上
4 風俗表現の意味と 機能 絵巻がいかに豊かに人間生活を活写しているかを作品に即し て実感し、これら風俗表現が<物語>への共感のコードである こと、そして慣用句とでもいうべき特定モチーフの用法が見ら れることを眺め、風俗表現に込められた時代のメッセージと絵 画伝統を考える。 同上同上
5 源氏物語絵巻と美 麗の造形 源氏物語絵巻の表現特性を解析し、これが平家納経や西本願寺 本三十六人集など、所謂<美麗の造形>と同様に、物合的な制 作背景を持つことを取り上げ、院政期の文化戦略の一端として の絵巻制作を検証する。 同上同上
6 和歌と絵画絵画に描かれた情景を見て和歌を詠んだり、和歌を題材として 絵画制作をすることは平安時代から広くおこなわれていた。和 歌を題材とした絵画は、扇絵、絵巻、屏風絵などさまざまな形 式をとり、江戸時代にいたるまで制作されている。このような 和歌と絵画の関係について、さまざまな作例を紹介しながら考 えてゆきたい。 並木誠士(京 都工芸繊維 大学教授) 並木誠士(京 都工芸繊維大 学教授) 2003/11/15 1654519.doc 2 回テーマ内容 執筆担当 講師名 (所属・職名) 放送担当 講師名 (所属・職名)
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祖師の伝記 鎌倉時代に入ると、仏教の各宗派が祖師の伝記や高僧の生涯を 描いた絵巻を制作するようになる。それらは、祖師の行状を顕 彰し、また、それを広く宗派の人びとに知らせる目的で制作さ れたと考えられる。このような祖師伝絵巻を紹介しながら、そ の役割や機能、用い方について考えてみたい。 並木誠士並木誠士
8 往生要集と地獄の 絵画 『往生要集』や『地蔵十王経』などのテクストや山中他界信仰 における宗教的景観との関連を念頭に置きつつ、長岳寺本六道 十王図を中心に、古代から近世初頭に至る地獄絵・六道絵の系 譜をたどる。 鷹巣純(愛 知教育大学 助教授) 鷹巣純(愛 知教育大学助 教授)
9 絵解きと物語絵画物語絵画がどのように教戒テクストとして機能したか、また口 承文芸と物語絵画がどのように接点を有しているのかを、現在
なお行われている絵解きの紹介とともに再考する。同上同上
10 戦記文学と絵巻鎌倉時代には、武士や合戦を題材とした絵巻が数多く制作され た。元寇を扱った蒙古襲来絵詞のような記録性の強い絵巻もあ るが、平治物語絵巻のように、合戦が一旦文学作品として成立 した後に絵巻化される例もある。ここでは、武士を描く絵画が 好まれた時代という背景を視野に入れて、戦記文学と絵巻の関 係について考えてみたい。 並木誠士並木誠士
11 室町時代の絵巻室町時代にはいると、土佐派や狩野派という画家の流派が生ま れ、絵巻制作に携わるようになる。彼らは伝統的な技法を基礎 としながらも、新しい受容者のために新しい表現を試みていっ た。土佐光信、狩野元信といった画家を中心に、室町時代の絵 巻制作を概観してみたい。また、室町時代から制作されるよう になるお伽草子のような庶民的な絵巻についても触れてゆき たい。 同上同上
12 信仰と美術聖徳太子絵伝や善光寺如来絵伝といった大画面掛幅の物語絵 画作例や、より庶民的な傾向を持つ参詣曼荼羅を検討し、その 表現構造を捉えると同時に、その視覚イメージの成立について 考察し、中世社会の信仰と美術・物語の交差を把握する。
鷹巣純鷹巣純
13 絵巻と風俗絵巻では、詞書に書かれていない内容や情景が絵の中に盛り込 まれることが多く、それらは主題に対して添景として絵巻に彩 りを添えている。そのような添景のなかに画家はみずからと同 時代の風俗を取り込んでゆくことがある。しかも、室町時代に はいると、その風俗表現が次第に画面のなかでおおきな位置を 占めるようになり、やがて近世初期の風俗画へと展開してゆ く。そのような展開の道筋をたどってみたい。 並木誠士並木誠士
14 小画面から大画面 へ 平安時代から鎌倉時代にかけて、文学作品を題材とする絵画 は、扇面や絵巻といった比較的小さい画面が中心であったが、 室町時代の後半になると、屏風のような大きな画面にも文学主 題の絵画が描かれるようになる。その場合には、大きな画面を 分節化して小画面を複数組み合わせる例もあるが、小画面をさ まざまなかたちで変容させて大画面化する場合もある。文学作 品を題材にした絵画の表現方法の違いやその展開について考 えてみたい。 同上同上 2003/11/15 1654519.doc 3 回テーマ内容 執筆担当 講師名 (所属・職名) 放送担当 講師名 (所属・職名)
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詩画軸の世界〜漢 詩と絵画〜 室町時代、禅宗社会を中心に漢詩を作り鑑賞することが流行し たが、その漢詩もまた和歌と同様に絵画と相互に密接な関係を 持っていた。漢詩と組み合わされたのは、やはり禅宗社会を中 心に定着していた水墨画であった。ここでは、漢詩と水墨画を 組み合わせた詩画軸と呼ばれる形式のさまざまな作例を紹介 しながら、そのあり方について考えてみたい。 同上同上