HOME 2004/11/05 1559214.doc 1 =近代ヨーロッパ史(‘05)=(TV 〔主任講師: 福井憲彦( 学習院大学教授) 〕 全体のねらい 近代とか近代化という言葉は、現代を生きる日本人にとって馴染み深いようでいて、じっくり考えてみ ると、果たしてどのような内容で捉えればよいのか、輪郭がいまひとつ明確にできない、そのような言 葉ではないであろうか。近代的な政治体制、社会秩序、ものの考え方、あるいは学問研究や科学技術、 これらを生み出したと見なされるヨーロッパの1819 世紀の歴史とは、いったいどのようなものとし て捉えられるのか。その歴史は現在にいたるまで、どのような遺産を世界に伝えてきたのであろうか。 地球世界の一体化という意味でのグローバリゼーションも、現代になって急に生じたわけではない。そ れは、すでに存在していた世界各地の地域的交易世界に、ヨーロッパが積極的に介入し始めたことによ って、現代に向かう数世紀の展開を開始したのであった。近代ヨーロッパの歴史的展開を、世界史のな かでのヨーロッパの位置取りと役割とを見落とすことなく、その大きなポイントにおいて捉えてみよう というのが、この講義の目標である。 回テーマ内容 執筆担当 講師名 (所属・職名) 放送担当 講師名 (所属・職名)
ヨーロッパによる 海外進出の開始: 15 世紀後半からのポルトガル、ついでスペインを先駆けとし て、ヨーロッパ各国が東方の富を目指して海外へと進出し始 めた。インド洋から東アジアにいたる海域を中心として、す でに豊かに存在していたアジア交易の世界に介入を目指すと 同時に、ヨーロッパは、大西洋を越えた南北アメリカへの直 接支配を開始した。17 世紀にいたるヨーロッパの海外進出に ついて、その歴史的な位置づけを捉えてみよう。 福井憲彦 (学習院大学 教授) 福井憲彦 (学習院大学 教授)
2 世界交易における 覇権争い: 17 世紀から18 世紀にかけて、大西洋世界とアジアのいずれ においても、おもにオランダとイギリス、およびフランスの あいだで、交易と植民地支配をめぐる熾烈な経済覇権競争が、 直接的な戦闘を含めて展開された。その顛末と、大英帝国に よる覇権確立への歩み、それらが非ヨーロッパ地域にもたら したものを考えてみる。 同上同上
3 18 世紀における社 会経済と政治: 18 世紀には、イギリスやオランダなど北西ヨーロッパから、 農業革命といわれる食糧生産の改善や人口の継続的増加が始 まり、社会経済全体の近代化への胎動が明確になる。他方、 経済的には古い型の農業経営を中心にしていたプロイセンや オーストリア、あるいはロシアのような国家では、啓蒙専制 による上からの近代化の模索が困難に遭遇する。ヨーロッパ 内の状況を整理して捉えてみる。 同上同上
4 「啓蒙の光」と近代 思想の誕生: 18 世紀の啓蒙思想といわれる思想潮流からは、三権分立の制 度理念や人権思想も生まれてくるが、しかしそれはまた同時 代の君主政を必ずしも否定するものではなかった。啓蒙専制 という表現があるように、君主たちも啓蒙思想には一定の関 心を示した。では、啓蒙思想の主要な特徴とは何であり、ど のような点で近代思想の先駆けと見なせるのであろうか。 同上同上 2004/11/05 1559214.doc 2 回テーマ内容 執筆担当 講師名 (所属・職名) 放送担当 講師名 (所属・職名)
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人口増加の開始か ら「移動の世紀」へ: 18 世紀から北西ヨーロッパを先頭に、人口の継続的な増加の 動きが始まる。人口学上の旧体制は終わりを告げる。それは 農業生産の向上とも一致した展開であった。20 世紀にかけて の人口動態の趨勢をおさえて、19 世紀のヨーロッパがそれま でにはない「移動の世紀」となり、アメリカ合衆国をはじめ 世界各地への移民がおこった状況を捉えてみよう。 福井憲彦福井憲彦
6 革命に揺れる大西 洋世界: 18 世紀末近くになると、大西洋の両岸では、アメリカ独立と フランス革命を代表格として、さまざまな革命運動や独立運 動が生じた。その運動の波は、19 世紀はじめにはラテンアメ リカ諸国の独立として現実化していった。それらの運動の動 向と特徴とを、そしてまたそこに賭けられていた課題とを、 時代のなかで理解してみよう。 同上同上
7 ウィーン体制と48 年諸革命: フランス革命とナポレオン戦争による混乱からの収拾を実現 したウィーン体制は、反動的な側面と勢力均衡の維持による 平和維持という側面とを併せもっている。同時代において政 治的自由と進歩を追求した人々は、この体制にどのように向 きあったのか。48 年にヨーロッパ各地で同時多発的に生じた 諸革命までの変革運動を理解するとともに、ヨーロッパがこ の時期抱えていた問題を明確にしてみよう。 同上同上
8 工業化と社会の変 容: ヨーロッパ資本主義の発展は、18 世紀後半からのイギリス産 業革命の開始とともに語られることが多かった。しかし近年、 産業革命という捉え方に対する疑義も出されている。では、 ヨーロッパにおける工業化のプロセスは、どのように理解で きるのであろうか。それにともなう社会の変容は、19 世紀を 通じてどのようなものだったのであろうか。 同上同上
9 農村のヨーロッパ と都市のヨーロッ パ: 一口にヨーロッパといっても、地域による差は大きい。東と 西、南と北というだけでなく、一国内においてもまたそうで ある。工業化と都市化が、19 世紀には明確な動力になって社 会経済と生活文化の変化を促していくが、各地の農村はその 動きのなかに組み込まれて、しかしまた独自の文化を維持し ていたところが多い。こうした地域間の相違、農村と都市と の相違について、要点を概観してみよう。 同上同上
10 科学技術の実用化 と産業文明の成立: 17 世紀のいわゆる科学革命以降、ヨーロッパでは科学的な実 験や発見・発明が積み重ねられていたが、19 世紀、とくにそ の後半には、科学技術の進歩は実験室を出て現実の社会や経 済に大きく実用化され、産業文明の成立を促した。どのよう な側面でそれらが見られたのであろうか。それは、人々の生 活や意識をどのように変化させていったのであろうか。 同上同上
11 国民国家とナショ ナリズム: フランス革命で明示された国民国家の原則は、19 世紀ヨーロ ッパにおいて重要な政治的位置を占めた。では、現実の政治 過程においては、どのように機能したのであろうか。また、 21世紀になるまで多くの人がその呪縛のなかにあるナショナ リズムとは、もともとどのような脈絡のなかで、どのような 性格を帯びたものとして形成されたのであろうか。 同上同上 2004/11/05 1559214.doc 3 回テーマ内容 執筆担当 講師名 (所属・職名) 放送担当 講師名 (所属・職名)
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植民地帝国という 野望の衝突: いわゆる大航海時代からすでに見られたヨーロッパによる植 民地獲得の動きは、さらに19 世紀に入って工業化が進展する と、原料の供給拡大や商品販売市場の拡大が求められ、いっ そう激烈な様相を呈するようになった。19 世紀後半にもなる と、国民国家の体裁を整えた列強は、いずれも同時に国外で は植民地帝国の形成を求めて衝突しだす。その展開と、それ が世界にもたらしたものとを明確にしよう。 福井憲彦福井憲彦
13 さまざまな帝国主 義: 帝国主義の定義はなかなか難しいが、ここでは19 世紀後半か ら20 世紀はじめにいたる時代における様相を、地政学的・軍 事的な側面、経済的な側面、そして社会的・文化的な側面か ら、いくつかの事例を踏まえて考えてみる。同時にまた、同 時代においてこうした帝国主義の諸側面に対する反対の動き がどのようにあったのか、それも考えてみよう。 同上同上
14 第一次世界大戦と いう激震: 20 世紀はじめのヨーロッパは、科学技術の進歩や経済の発展 をうけて物質的な豊かさを手にし、識字率の向上や教育の普 及に示されるような社会的な制度の整備も確実に進みつつあ った。だが、ヨーロッパが文明の先端にあるという確信を、 大戦は長期にわたる総力戦の悲惨な現実でもって打ち砕い た。工業化以後の最初の本格的全面戦争であった大戦がもた らした結果を整理してみる。 同上同上
15 歴史文化の継承と 芸術的創造: 国や社会によって時差はあるが、ヨーロッパの多くのところ で19 世紀からすでに、それぞれの歴史文化を学問的に解明 し、歴史的遺産を保存し継承していこうとする動きが創られ ていく。多面にわたるそのあり方を捉えてみよう。また他方、 いくつかの都市を中心にして各地で、豊かな芸術的創造の動 きが更新されていった。その主要な特徴を整理して捉え、ヨ ーロッパの近代がきわめて複合的な性格をもって展開した点 を理解したい。 同上同上