HOME
2004/12/24
1892410.doc 1
= 量子力学(‘05)=( TV)
〔主任講師: 市村宗武( 法政大学教授)〕
〔主任講師: 大西直毅( 東京国際大学教授)〕
全体のねらい
自然現象や物質の性質の理解,あるいは,ナノテクノロジーでの開発などには,量子力学は必須のも
のになっている。量子力学はミクロの世界を司る法則で,原子構造の解明とともに確立された。光は波
動と考えられてきたが,粒子性を示す実験などで,二重性が明らとなり,電子も同じ二重性をもつこと
が判明し,量子力学が完成される。その歴史を追いながら量子力学の理論体系を理解することがねらい
である。
回テーマ内容
執筆担当
講師名
(所属・職名)
放送担当
講師名
(所属・職名)
1
量子論は光から:
ホイヘンスの光の波動説に対しニュートンは光が
直進することから光の粒子説を唱えた。19世紀の
初頭,波動説が復活し,電気と磁気が統一的に理解
され,光の電磁波説が提唱され,実験的も確認され
た。スペクトルの中に暗線と輝線が発見され,それ
らの色と波長の関係が明確となった。
大西直毅
( 東京国際
大学教授)
大西直毅
( 東京国際
大学教授)
2
量子の登場:
輝線が暗線に反転する現象から,光の吸収率と放
射率の比はその波長と温度のみで決まるとする定理
が示され,その関数を決めることの重要性が指摘さ
れた。それにプランクが答えたことから量子論が生
まれた。光電効果が光量子の概念で説明され,光の
粒子性が示唆された。
大西直毅
大西直毅
3
原子の構造がわ
かった:
ドルトンの原子論はアボガドロの分子論へと進
み,既知の元素の数が増え,周期表が提唱された。
陰極線などで電荷と質量の比が測定され電子の存在
と性質が明らかになった。放射能の一つのアルファ
線の散乱で原子の中心に原子核が発見され,原子の
構造が明らかとなった。
大西直毅
大西直毅
4
量子力学への端
緒:
ボーアは定常状態と振動数条件を導入し,水素原
子のスペクトルを見事に説明した。古典量子化の条
件が定式化され,電子の状態の量子数が明らかにな
った。古典力学との対応原理を頼りに物理量の非可
換性が提唱され,行列力学として定式化された。
大西直毅
大西直毅
5
光が粒子・電子
も波動:
コンプトン散乱の実験で光の粒子性は確実なもの
になった。光が波動と粒子の二重性をもつように電
子もまた粒子性と波動性を持つことが提唱された。
この考えを基に電子の波動方程式(シュレーディン
ガー方程式)が導かれ,水素原子のエネルギー準位
が波動力学で再現された。
大西直毅
大西直毅
2004/12/24
1892410.doc 2
回テーマ内容
執筆担当
講師名
(所属・職名)
放送担当
講師名
(所属・職名)
6
量子力学へ到達:
定常状態をベクトルとし座標や運動量などの物理
量がベクトルを変える演算子と考え,行列力学と波
動力学を統一的に記述する量子力学が完成された。
波動関数は実在するのではなく光や電子の存在確率
を表すに過ぎないとする確率解釈が提唱され,学会
は賛否両論に分かれることになる。
大西直毅
大西直毅
7
粒子の不思議な
振舞い:
基本的な調和振動の問題を,交換関係を使って代
数的に解き,波動関数を求める。ついで,井戸型ポ
テンシャルの問題を波動方程式を解いて束縛状態を
考える。また,散乱状態を取扱いからトンネル効果
を考える。アルファ崩壊はトンネル効果とし,放射
性元素の寿命が理解できるようになった。
大西直毅
大西直毅
8 粒子の波動像と
不確定性原理:
電子など通常粒子ととらえているものを量子力学で
は確率の波で表現する。この古典的粒子像が波動に
おける波束の概念で理解されることを説明する。こ
の見方から不確定性原理を理解するとともに、演算
子の交換関係に基づく量子力学の理論の枠組みから
も不確定性関係を一般的に導く。
市村宗武
(法政大学
情報科学部
教授)
市村宗武
(法政大学
情報科学部
教授)
9 3次元問題と
角運動量:
現実の問題の多くは3次元の問題であり、クーロン
力のように力が球対称な場合(中心力)が特に重要で
ある。このとき角運動量が保存し、極座標を用いる
と動径と角度の座標が変数分離できて解法が容易と
なる。角度の部分の波動関数は求めることから“空
間の量子化”の意味を理解する。こうした中心力の
問題の解法の一般論を学ぶ。
市村宗武
市村宗武
10 水素原子:
ボーア模型は水素原子の示す諸性質を見事に説明し
たが、ここでシュレーディンガー方程式から出発し
て第9章の方法を用いて水素原子の問題を解く。エ
ネルギー準位と波動関数を求め、ボーア模型の成功
の背景と問題点を明らかにするとともに、量子力学
の立場から水素原子の構造を理解する。
市村宗武
市村宗武
11 スピンおよび多
粒子系:
静止した電子でもスピンという自転に擬せられる半
整数の角運動量を持ち、磁石になっている。このよ
うな古典力学には現れない自由度の概念を学ぶ。つ
いで、複数の同じ種類の粒子は互いに区別できず、
相互の置き換えに対して波動関数が対称か反対称と
いう統計性を持つことを学ぶ。これは排他原理を導
き周期表の説明などに重要な役割を果たす。
市村宗武
市村宗武
12 原子と分子の構
造:
幾つか(多数)の粒子のなす系の取扱いの基本例とし
てまず2電子を持つヘリウム原子を考察する。つぎ
に周期表の理解を中心に球対称な平均場近似を用い
て原子の構造を定性的に考察する。終りに分子を形
成する機構の1つとして水素分子イオンを考察す
る。取扱う方法として変分法という近似法を学ぶ。
市村宗武
市村宗武
2004/12/24
1892410.doc 3
回テーマ内容
執筆担当
講師名
(所属・職名)
放送担当
講師名
(所属・職名)
13 摂動論・/FONT>補正と
遷移過程の取扱:
考える系が完全に解ける本質的部分と小さな補正に
分けられる場合に、補正を取り入れる摂動論という
近似法を学ぶ。この手法をまず定常状態に応用し、
補正によるエネルギーの変化などを求める。次に小
さな補正が系への外的刺激であるとき、系が時間と
ともに変化していく様子(遷移過程)をこの摂動論で
取扱い、黄金律と呼ばれる現象の理解にも、実用に
も極めて有用な公式を導く。
市村宗武市村宗武
14 原子核の世界:
原子核も陽子・中性子というより基本的な粒子でで
きていることをその発見の歴史を踏みながら説明す
る。あわせて原子核の世界の基本的性質を学び、ま
た、陽子と中性子を結びつけ原子核を作り上げる新
たな力である核力の起源を学ぶ。
市村宗武
市村宗武
15 基本粒子と統一
理論を求めて:
ニュートリノやクォークの発見への道をたどり、物
質を構成する基本粒子はクォークとレプトンである
という現在の描像を説明する。また、それらの基本
粒子間にはゲージ粒子と呼ばれる粒子が交換されて
相互に作用しあっているという現代の理論の展開を
述べ、その先に期待される素粒子世界の統一理論な
ど現代物理学の最先端を垣間見る。
市村宗武
市村宗武