HOME 2005/01/14 1652613.doc 1 =西洋音楽の諸問題(‘05)=(TV 〔主任講師: 笠原潔(放送大学助教授)〕 全体のねらい 西洋音楽史を彩る様々な作品を取り上げながら、現在の西洋音楽研究では何が起こっているのか、どの ようなことが問題になっているのかを、視覚メディアを駆使しつつ、紹介し、西洋音楽研究の最先端の 状況を紹介する。 回テーマ内容 執筆担当 講師名 (所属・職名) 放送担当 講師名 (所属・職名)
西洋音楽の時代区 分: 全15回の講義の総論として、西洋音楽の時代区分と時代様 式の変遷を示し、第2回以降の講義で扱うテーマがどの時代 に該当するものであるかを明らかにする。 笠原潔 (放送大学助 教授) 笠原潔 (放送大学助 教授)
2 《エロイカ》はなぜ 壮大か?: ベートーヴェンの交響曲第3番《英雄(エロイカ)》を題材 に取り上げ、当時の時代様式を駆使してベートーヴェンがど のように壮大な「英雄」像を音楽的に描き出すのに成功した か、楽曲の構造と楽曲の印象はどのように結びつくか、また、 その場合の「英雄」像とはどのようなものか、を明らかにす る。 同上同上
3 マーラーの「表現」 世界: 表題音楽と絶対音楽、純粋器楽音楽と声楽音楽、厳密な楽曲 構成と下意識的衝動の爆発との間を揺れ動き、20世紀音楽 への道を開いたマーラーの「表現」世界を取り上げ、彼はど のように自らのうちなる「自然」を表現したか、その場合の 「自然」とはどのようなものか、を明らかにする。 同上同上
4 真のショパン演奏 を求めて: ショパンのピアノ作品を題材に、自筆楽譜の問題、演奏様式 の問題、演奏技法の問題、楽器の変遷、音楽に表現された民 族性の問題と記譜法の問題など、西洋音楽の諸作品における 様々な問題点を紹介する。 同上同上
5 楽器の変遷:モーツァルト、ベートーヴェン、シューベルトらが用いたピ アノは現在のピアノと大きく異なる。彼らは、どのような楽 器を念頭に置いて作曲したかを、当時の楽器を紹介しながら、 明らかにする。併せて、ペリー来航時に日本に持ち込まれた 軍楽器を、それを描いた日本側絵図を通じて紹介する。 同上同上
6 自筆楽譜をめぐる 諸問題: 自筆楽譜の研究は、資料研究の基礎となる作業である。そう した自筆楽譜の研究は、どのような成果をもたらすかを、日 本でのメンデルスゾーンの自筆楽譜研究の第一人者である星 野宏美とともに紹介する。 笠原潔 星野宏美 (立教大学助 教授) 笠原潔 星野宏美 (立教大学助 教授)
7 記譜法の問題:楽譜は、作品の形をそのまま表したものではなく、各時代の 記譜習慣に基づいて書かれている。従って、時には、楽譜を 読みかえるべき個所があるが、そうした読みかえは時に演奏 解釈に大きな相違をもたらす。記譜法をめぐるそうした問題 をバッハやシューベルトの作品を例に紹介する。 笠原潔 笠原潔 2005/01/14 1652613.doc 2 回テーマ内容 執筆担当 講師名 (所属・職名) 放送担当 講師名 (所属・職名)
8
オペラの演技:オペラの舞台という虚構空間にリアルな作品世界を作り出す ために、どのような表現が必要かを明らかにする。後半では、 ヘンデル時代のオペラの表現様式の復原に取り組んでいる声 楽家の原雅巳とともに、バロック時代のオペラの表現様式に ついて学ぶ。 笠原潔 原雅巳 (声楽家) 笠原潔 原雅巳 (声楽家)
9 今生きるバッハの メッセージ―世俗 を超えるまなざし: バッハの世俗音楽は教会音楽と対立するものではなく、むし ろ同じ精神を共有していることが、最近の研究を通じて、ま すます明らかになってきている。バッハのやわらかな宗教的 感性は、世俗音楽にも、豊かに吹き込まれているのである。 講義では、最近再評価されつつある世俗カンタータや器楽曲 を例にとりながら、その中に蔵された世俗を超えるまなざし を探り、世俗曲の教会曲への転用(パロディ)の意味につい ても考えたいと思う。 礒山雅 (国立音楽大 学教授) 礒山雅 (国立音楽大 学教授)
10 今生きるバッハの メッセージ―やわ らかな宗教的感性: バッハの音楽は、時代と国境を越えた真の宗教的メッセージ を、今日に送り続けている。そのメッセージが一宗派の中か ら発せられながらもそれを超えた力を備えているのは、バッ ハがやわらかな宗教的感性の持ち主で、その教会音楽を、宗 教的事柄を新たにとらえなおす場としていたからである。講 義では、バッハが教会カンタータや受難曲を書き、演奏した プロセスをたどりながら、ドグマに偏らない、宗教的感性の やわらかさを発見したい。 同上同上
11 キリシタン時代の 音楽: 日本が初めて西洋音楽に接したのはキリシタン時代であった が、その実相はどのようなものであったか、当時の文献に基 づいて紹介する。併せて、この時代に日本に紹介されたルネ サンス時代後期の聖歌がかくれキリシタンたちの間で伝承さ れている様子を紹介する。 笠原潔 笠原潔
12 江戸の洋楽史:江戸時代になると、新たな西洋音楽の波が日本に流入してき た。その音楽とはどのようなものであったか、それに関する 史料にはどのようなものがあるか、また、そうした史料は西 洋音楽の実相を明らかにする上でどのような価値を持ってい るか、を紹介する。 同上同上
13 漂流民が伝えた西 洋音楽情報: 江戸時代の日本に伝えられた西洋音楽・西洋音楽情報は、長 崎・出島を通じてだけのものではない。漂流して、ロシアな どに流れ着いた漂流民たちも、貴重な情報を持ち帰った。そ の中には、大黒屋光太夫が持ち帰ったロシア歌曲や、当時の ピアノに関する貴重な証言もある。ここでは、漂流民たちが 持ち帰ったそうした情報について紹介する。 同上同上
14 幕末洋楽史:幕末になると、西洋各国の軍楽隊が日本を訪れるようになっ た。そこでは、どのような音楽が演奏されたのか、それに関 する史料にはどのようなものがあるかを、現地を訪れながら、 紹介する。 同上同上
15 音楽図像学:過去の音楽状況を探る上で、図像の研究は大きな効力を発揮 する。しかし、そこには注意しなければならない問題もある。 音楽図像学をめぐるそうした問題を、幕末の日本で描かれた 西洋音楽関係の図を材料に検討する。 同上同上