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人工知能史 |
ジョン・L・キャスティ |
AIの開発手法はその初期から今日に至るまで2つの対立したアプローチがとられている。トップ・ダウン型とボトム・アップ型だ。
トップ・ダウン型はマーヴィン・ミンスキーを筆頭に、 脳の生理学構造をひとまず無視して、シンボルやルールで人工知能を作り上げようとするもの。
ボトム・アップ型はフランク・ローゼンブラットを筆頭に、神経構造を重視するものだ。
これら2派は1960年代まで競い合ったが、神経構造モデルのパーセプトロンの限界が示されボトムアップ型は下火となる。
この辺の解説は、
ハワード・ガードナー「認知革命」やパラメ・マコーダック「コンピューターは考える」がおもしろい。それ以降1970年まではトップダウン方式全盛の時代だったが、「背景知識」や「
フレーム問題」など根本的な問題を解決することはできなかった。1980年代になってコンピューターの進歩によって、ボトムアップが見直され、「コネクショニズム」として、再び表舞台に登場してくる。
コネクショニズムの思想や心、脳、機械、について欠かせない本はダクラス・ホフスッター「ゲーデル、エッシャー、バッハ」である。
トップダウン方式とボトムアップ方式に関する優れた説明は、ジャック・コープランド「人工知能−哲学的入門」にある。
1980年台にはいるとAIというアイディアそのものが不可能であるという意見が他分野から提出される。哲学者サールの
中国語の部屋である。これは
チューリングテストに対する反論として、著書「心・脳・科学」の中で展開された。第2の攻撃はロジャー・ペンローズの「皇帝の新しい心」に始まる。これは、ゲーデルの
不完全性定理がベースになっている。この理論はその後「量子脳理論」となって現在の最新理論の一つに発展した。1997年チェスプログラムがカスパロフを負かしたニュースが世界を駆けめぐった。しかしこれは単なるゲームで、知能ではない。しかしカスパロフは「指し手に異星人の知性を感じた」と述べているのが、非常に興味深い。十分に発達したプログラムに一種の人間を感じたようだ。しかし、ディープ・ブルーの延長線上に創造性を期待することはできない。
一方翻訳については、言語を理解しないと真の翻訳ができなため、すすんでいない。チョムスキーの言語理論によって、若干の進歩はあったものの、力まかせに過ぎない。チョムスキーの言語理論に限界を知るにはランディー・ハリス著「言語戦争」がいいだろう。
楽観的な著書としては、ジョン・ハッチンス、ハロルド・ソマーズ著「機械翻訳入門」を読むといい。
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ケンブリッジ・クインテット ジョン・L・キャスティ THE CAMBRIDGE QUINTET JOHN L.CASTI 1998 1998 新潮社
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