2002年

文明の主役

エネルギーと人間の物語

森本哲郎

 

プロメテウスの火

エネルギーなしに生物は生きていけない。おなじように文明もエネルギーなくして形成されず、発展することも不可能だった。そのようなエネルギーの概念は古代ギリシアの「エネルゲイア」なる語に由来する。

エネルゲイアとは、作用、活動、勢力を意味し、アリストテレスは、これを彼の哲学の中心に据えた。

彼にあっては、潜在的なものが実現する、その実現されたものがエネルゲイアであり、たとえば、彫刻家が大理石などの素材から、像をつくりだすような場合、その「仕事」の結果、制作された像はエネルゲイアとなる。そこでエネルゲイアは「現実態」などと訳されている。

こうした過程を文明に置き換えてみるば、文明とはまさしくエネルゲイアであり、すなわちエネルギーが生み出す「仕事」によって、人間が築いたもにほかならない。要するに文明とは、「エネルギーのかたまり」であり、エネルギーの成果なのだ。

しかし人間個々にあたえられた、エネルギーはあまりにもわずかなものであった。人間の体は、力ではとうてい、獅子や象に及ばず、脚力においては、馬や犬にかなわない。

しかし、人間には「考える力」があった。そして、文明の灯はともされる。

第1のエネルギー革命は「火」である。火は闇を照らし、寒さをしのぎ、野獣から身を守り、食料の調理、モノの加工などさまざまな「仕事」を可能にした。そして人は火を活用するこにより、さらに知を活性化させた。やがて、人は地中に埋蔵されている、鉱物、青銅や鉄や金などを人間が利用できるように加工した。その延長線上に石炭、石油の発見、利用があった。

 

 

 

 


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194 文明の主役 エネルギーと人間の物語 森本哲郎 2000 新潮社

 

 

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