魂のプロセス

 
  フレデリック・ヴィーダマン
高野雅司 [訳]
諸富祥彦 [解説]

定価 (本体 1900円 + 税)
発行:コスモス・ライブラリー
発売:星雲社 


 

トランスパーソナル心理学再生の果敢なる試み

人間としての全体性 - なぜ、その獲得は困難で、稀なのか?
それは、全体性への入り口が凄まじいパラドクス(逆説)によって護衛されているためである。

“全体”的であるためには、自分を成長させる(自己実現)だけでなく、自分よりも大きな現実へと身を委ねる(自己超越)必要がある。

本書はトランスパーソナル心理学の成果を継承しつつ、自己実現と自己超越との間を絶え間なく循環しているプロセスを「魂のプロセス」と見なし、それに全体性のパラドクス解決の糸口を見いだす。

著者によれば、魂を復活させ、あらゆる生命への愛というその本質を再確認し、現代に生きるわれわれの指針としてそのプロセスを生きることが、意識的かつ情熱に満ちた人生への最も重要な鍵である。トランスパーソナル心理学の新たな可能性に大胆に挑んだ名著。

「魂のプロセス」 フレデリック・ヴィーダマン 著

 

目次

第1部 全体性のパラドクスを理解する

第1章 全体性のパラドクス
第2章 トランスパーソナル運動の重要性
第3章 内在性 − 科学的な見地
第4章 超越性 − 神秘主義的な見地
第5章 プロセス − ふたつの領域を混ぜ合わせるもの
第6章 3つの見地それぞれの強みと弱み
第7章 トランスパーソナル心理学の重大なる欠陥
第8章 仲介者としての魂
第9章 魂の仮説への反論

第2部 全体性のパラドクスを生きる

第10章 内在性 − 人生への強い関心
第11章 超越性の贈り物
第12章 創造的な緊張を受け入れる
第13章 統合的な決断を下す
第14章 結論

 

 

序 文

人間としての全体性(wholenesss)の獲得は、なぜ困難で、捉えにくく、また希なのだろう?それは、全体性への入口が、凄まじいパラドクスによって護衛されているためだ。「全体」的であるためには、自分を成長させる(自己実現)だけでなく、自分より大きな現実へと身を委ねる(自己超越)必要もある。本書の中で、私はこの全体性の根本的パラドクスと格闘していく。

歴史上、人間の全体性に内包されるこのパラドクスは、古代からのさまざまな宗教や哲学、そして心理学の分野で認識されてきた。私はその認識を具体化し、現代的な焦点を当てる。そのために、人間の自己超越へと目を向けた新しい心理学学派、トランスパーソナル心理学を吟味し、分析し、批評していく。

本書は、トランスパーソナル心理学が残した足跡を継承しつつも、自己実現と自己超越との間を絶え間なく循環しているプロセスという考え方を発展させる。このプロセスとは、まるで降雨と蒸発を繰り返して大地と空の間を循環し続けている水のようなものだ。私は、そのプロセスがどのようにして起こるのかを示し、それを人間の全体性の探求へと応用する。抗しがたいある理由から、私はこのプロセスを「魂のプロセス(the soul process)」と呼んでいる。

全体性の根本的パラドクスという極めて深遠なテーマを探求するため、必然的に私は、科学から神秘思想、古代の神話から先端技術、学術的研究から心理療法まで、幅広い分野を取り扱っていく。また、本書は、関連分野の学術的利用に基づいてはいるものの、全体性に関する単なる学術的な取り組みなのではない。本書を書く動機は、生きることへの情熱に根ざしており、究極的には、より完全で意欲に満ちた人生を生きることにこそ関係しているのだ。

 それゆえ、第2部では、全体性を実際に生きようとする時に生じる実践的な問題を論じている。そこでは、第1部でのさまざまな理論の学術的議論から、より大きな全体性の実体験へと焦点を移していく。全体性を追い求める日々の中で、仕事と家庭、帰属と自由、現実性と精神性など、ふたつの世界の間での「板挟み」を感じている一般的な読者の方々は、第2部の各章から多くのヒントを得られるものと思う。

これまでにも多くの優れた著作家たちが、人間の全体性というテーマを扱ってきた。本書の参考文献を見てもらえば、私がそうした著作を尊重し、かつ十分にふまえている点をお分かりいただけるだろう。全体性というテーマについて読み、書き、体験する者は、私を含めて誰でも、より大いなる「明晰さ」へと向かう継続的で容赦のない進化の流れを感じるに違いない。この進化の流れに対する私なりの貢献とは、全体性のパラドクスについての綿密な描写であり、トランスパーソナル心理学の比較検討と思慮に富んだ批評である。さらには、トランスパーソナル心理学が必要としている規範として、また全体性のパラドクスを解決するために必要な理解を与えてくれる概念として、プロセスという観点から魂を捉え、挑発的に論じることでもある。

魂という概念は、人間に関する最も古い概念のひとつだ。魂は私たちの中に息づいており、常に活動的でもある。しかしながら、現代においては忘れられ、ほとんど注意が向けられることもない。何よりも私は、魂をこの「不可解な休憩所」から復活させたいのだ。そして、あらゆる生命への愛という魂の本質を再認識し、そうした本来備わっているはずの普遍的な愛に対する新たな渇望感を私たちの一人ひとりの中に蘇らせたいのだ。

現代という地球にとっては暗い時代にあって、魂は私たちの指針であり、神の可能性の使者でもある。「内在性(immanence)」と「超越性(transcendence)」との間を循環するプロセスとして魂を理解し、そのプロセスを生きること。それこそが、意識的かつ情熱に満ちた人生に至るための最も重要なカギなのだと、私は信じてやまない。

このような考え方に生命を授けること。そのことこそ、本書が真に目指すものなのだ。

 

 

 


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