水の奇跡


 水にはほかの物質にない特性がある。

 まず液体より固体の方が軽いことだけで通常の物質の状態を覆している。もし氷が通常の物質と同じに水の底に沈んだらどうなるだろう?年々水の底から氷がたまって、すべての海すら氷の塊になってしまっただろう。当然そんな所に生物は生まれなかった。氷はそれどころか、潮や、池の表面に浮かんでは保温の役割すら果たしているのだ。

 沸点についても通常の分子量にあてはめれば、零下百度で凍り、零下九〇度で沸騰するはずだ。そうなると水は私達の体温で沸騰してしまい、地上は何処も彼処も水煙がただ立ちこめる世界となる

 分子結合も比類なく強い、あまりに多くの水素結合をしているため、コップ一杯の水は一つの巨大な分子のようなものである。この結合の強さは、水同士では表面張力になってあらわれるが、他の物質とも強力に結合しようとする。例えばコップに水が半分のときにはそのガラスの縁を少しはい上がるのも、ガラスと結合しようとしているからである。

 実はこの何とでも結合しようという作用があってこそ、私達の血は体中に染みわたることができるのだ。水のもっともリラックスした温度が、哺乳類の体温とぴったり符合する三五度から四〇度の間であることも、水の特徴が生命を育んだことをうかがわせる。

また水は並々ならぬエネルギーの塊でもある。はかのどんな物質よりも多量の熱量を吸収し発散する。たった一リットルの水にも、六〇ワットの電球を百時間も点灯させておくだけのエネルギーを蓄電でき、いまでも宇宙船の長期発電機の燃料として使われている。水のエネルギーは液体から固体に変化するときその一部が放出される。寒い夜に温室の中に、水を満たした桶をおいておくと、水から練るときに発散するエネルギーで、温室の中は外よりも暖かくたもたれるのはこのせいだ。同じように、気体から液体になる時、水蒸気から水になる時もエネルギーを放出する。水蒸気の塊である雲が雨を降らすとき吹く風や雷は時には原子爆弾にも匹敵するエネルギーを放出することからも水のエネルギーの強さを感じる。

水は時間さえかければ最も強固な金属さえも溶かすほど苛烈であるが、同時にあまねく生命を支える寛大さを持っている。この霊妙なるものをもっと深く理解したいものだ。

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