*生物たちの基本的戦略 生物の進化は、物質との絶えざる戦いである。生物は一度に勝利を収めることはない。次第に物質に打ち勝って上昇し、最後に物質そのものを越えて出ていく。それは個人の進歩の場合も同じである。
成熟も、普通は徐々に進むものであり、最初から動物的欲望をかなりの程度までコントロールできる人は少ない。特に若いときには、子孫を増やす時期だから、欲望も強い。従って、何度も戦いに疲れたり、敗れることはあるかもしれない。しかし、徐々に上昇進化をすることが肝心なのである。生物たちが物質の抵抗との戦いをあきらめずについに空を飛ぶまでにいたったように、途中であきらめて戦いを放棄しないことが大切である。
人間は<もう一度心を取り直す>限り、理性的存在であり、尊敬すべき存在となる。人間の尊さは失敗しないことよりも<常にもう一度心を取り直す>ところにあるからだ。そして人間は死ぬまで(物質から完全に自由になるまで)常に<もう一度心を取り直す>べく運命づけられた存在なのである。なぜならば、進歩は常に目標に達していない反省をともない、目標は真人類メタアントロポスという高い存在の完成だからである。