バイオフィリア

美を色あせさせるもの

 E.O.ウイルソン

生物界全体を眺める一番いい方法は魔法の万能映写機をもつことだ。その映写機で、ほんの数分の出来事を数時間かけてスローモーション再生したり、逆に何年、何世紀にもわたる事象を二、三分に凝縮して再生できてしまえれば、あらゆる観測がなされるではないか。

 しかし、こうした夢のような科学が現実をなったとしても、そのもたらすものの全てが良いものとは限らない。今ですら科学の過信は人間疎外の原因となっているではないか。そして科学の驚異の核心に、美が色あせていく。

 哲学は天使の実を切り取ってしまう

 規則と命令であらゆる神秘を征服し

 精霊の棲む大気や、ノームの棲む鉱床を覆し

 虹の糸をほどいてしまうのだ。

 科学は全てを還元し、あまりにも単純にしてしまう

 全てを凝縮し、抽象化し、普遍性へと近づける

 解き得ないものまで、解き得ると思い込み

 魂を忘れ

 芸術的な才能の火花を閉じこめてしまうだろう

 

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