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2006年8月30日来日公演の アーサー・I・ミラーの著書「アインシュタインとピカソ」について。

講演案内


第1章 二つの世界を一つに

    年:ポアンカレ「科学と仮説」を出版


1904年:アインシュタインがこのドイツ語翻訳を読む

1905年:ピカソIがプランセからポアンカレの話を聞く

 

1905年アインシュタインとピカソは示し合わせたように、空間と時間について新しい概念を探り始めた。

直接見たままではだまされるということを知ったのである。

そしてアインシュタインは相対性理論(1905)をピカソはキュビズム(1907)にいたる。

 


アインシュタインの空間と時間の扱い方は、数学を主とするものものではなかった。光や重力の新しい描き方の発見であり、美意識に属する認識だった。

逆にピカソの空間研究は形象を幾何学的に還元することだった。

ピカソはセザンヌを「ただ一人の師」と呼んできた。

{セザンヌの「ありえない絵」の意味をしっていたからだ。 それまでの伝統的な1点透視図法から解放され、「空間に陰影」をつける「パサージュ」を直観で発見したからだ。

テーブルの上の左の皿はほぼ上から描いたように丸い。しかし、右の足付き皿は横からみたように細長い。 1つの絵に複数の視点を取り入れ、どの角度からみても丸いリンゴがそれを中和する。}

 

1922年までには、多くの芸術家がピカソのあと追い、キュビズムは分派した。最初に完全に非具象的な絵画を描いたのはカディンスキーだった。彼は質量=エネルギーの等価性、X線、放射能に興味を持ち、総てのものは究極的に無定形であるとして、抽象画の根本を作った。

さて、ここでおもしろいのが、キュビズムを開いたピカソが決して純然たる抽象というルビコン側をわたらなかったことだ。そして、アインシュタインも高度に抽象的な量子力学を認めなかった。

ピカソにとってカディアンスキーは量子力学的位置の絵画なのである。

 芸術と科学が共通に展開してきた発想は、外観を超えたところに現象の新しい表現をもとめるころだろう。

この努力は創造性が生まれてくる瞬間、つまり領域同士の境界が崩れ、美学に属する概念が優先されるようになる時、焦点を結ぶ。

手元にある情報を超越する思考はどのようにして現れてくるのか?複合領域的な思考様式が分析を必要とする。それが、アインシュタインとピカソによって証明され、21世紀の思考法を促す。

 

{相対論の基本的考え方はポアンカレがアインシュタイン以前にすべて出している。「アインシュタイン、特殊相対論を横取りした」と主張するものもいる。 }
 


 

第2章 「かっこいい靴磨き」

章テーマ:二人が育った環境



第3章 「あれほど騒がれただけのことはある男の美しさ」

章テーマ:二人が育った環境



第4章 いかにしてピカソは『アヴィニョンの娘たち』を発見したか 

章テーマ:ピカソの人生



第5章 ブラックとピカソは空間を探検する 

章テーマ:ピカソの人生


間幕

 

 ポアンカレ自身は芸術家と科学者との間で、創造的能力が共通であることを信じていて、その思考様式も一般の科学者の固定観念による思考様式と明確に違っていた。

彼にとって,美意識のセンスと合理的センスの組み合わせは頭脳の最も高度な能力と位置づけられ「文明に価値があるのは、科学と芸術を通じればこそのこと」という。

「科学と仮説」:ポアンカレは 科学者も自然の表現を求めている者とし、哲学と心理学の一番奥にある問題ー我々に降り注ぐ感覚の混成物から正確な知識をどう明らかにするかーを探るために、彼は進んで、精神の建設についての仮説を提案する。 これこそが、若い芸術家と若い科学者をともに刺激した感覚である。

 

美学がどう相対性理論の発見にどう機能したのか?

 

なぜ、しかし結果はアインシュタインとピカソだけがこの劇的な飛躍と遂げることができ、他の人にできなかった理由は?:



第6章 驚異の年―いかにしてアインシュタインは相対性理論を発見したか



第7章 「アインシュタインにこんなことができるとは思いもよらなかった」



第8章 芸術と科学における創造力  本書のまとめ、結論を引き出す

この並列された伝記を理解する為には、認知科学の理論から得る。その中には、記憶に蓄えられた情報が、無意識の思考の間にどう処理されるかに関する成果があり、ゲシュタルト心理学の概念もある。

 

二つの創造の瞬間には分野の境界はなくなる。美意識が前面にでてくるのだ。

心理学者のハーワード・ガードナーは、「人間には比較的に自立的な知的能力がいくつかそんざいする」という説得力のある論証をし、それを「複数知能マルティプル・インテリジェンス」と呼んでいる。

「複数知能」がかつて合流したのは、十六世紀〜十七世紀の初め、つまりアルプレヒト・デューラー、レオナルド・ダ・ヴィンチ、ガリレオの時代以来、現れていなかった。

地球中心の宇宙観から自由になろうとがいていたが、美意識がその突破口となったのだ。{宇宙の中心には、人間ではなく、神がいるのが美しいはずだ。}

太陽中心の宇宙は、中心にある源からくる光と熱という形をとった神の手を示すものだった。

アインシュタインとピカソにとって、「同時性」が鍵となった。

しかしなぜ、ピカソやアインシュタインが突破口を開く人物となり、ドラン、マティス、ローレンツ、ポアンカレといった大家たちではなかったのか。

圧倒的多数のブ地理学者が画家は、一日何時仕事に励んでも、アインシュタインやピカソの域には達しないだろう。高い創造性を攻勢するものを理解するためには、無意識の力学の理論が必要だ。頭の中で、信じられないような新しい組み合わせに向かって概念(コンセプト)はどう動き回っているのか?

 

 ここで、筆者は、創造力のゲシュタルト心理学など、認知科学のいくつかの概念を組み込んで開発してきたあるモデルを使うことにする。

特にアインシュタイン,ポアンカレ、ピカソの回想とも一致し、膨大な心理学的実験との合致して、豊かなアイデアは現実の時系列で生じるものではなく、思考の爆発として生じることがわかっている。

極端な異分野横断的思考の頂点なのである。

{しかし、フロイト的な{深層的}「無意識」とは別の意味}

 

意識的思考

アインシュタイン:問題の選択

ピカソ:娼館というテーマの選択

 

無意識的思考

アインシュタインの無意識的思考には、例えば、10年間頭の中にあった1895年の思考実験、相対運動の諸問題を理解しようという反復される試み、発電機の動き方に関する諸問題、受け入れられている基盤をいつも問えというマッハの強力なメッセージ、ポアンカレのエーテル風実験の失敗と、それらの実験とローレンツの局所時間との関係を理解しようとするポアンカレの格闘を含む、並行しながら交差する流れにあった。

 

ピカソの無意識的思考には、メリエスの高度に編集された映画、マレーとマイブリッジの実験的な写真、自身の写真研究などのパリの視覚文化、X線、アストラル界などのオカルト的なもの、象徴主義の文学、哲学の思潮、ウィリアム・ジェームズの地殻に関する考え方などが入っていくる。

 

ひらめき

何度も書き直したベートヴェンのスコア、構想に20年かけたダーウィン。しかし、これと対照的にアインシュタインとピカソの製作スピードが非常にはやいことからも、ひらめきが鍵になっていることが分かる。

 

 アインシュタインピカソ
美意識不要なものを排する美意識 表層の奥底の構造を探るために、自然主義的ではなく、概念的な対象表現をもとめることが含まれていた。
視覚的イメージ  
連続性  
直観  

ハーワード・ガードナーは、大天才たちを「達人(マスター)」「創造者(メーカー)」にわけた。

達人(マスター) 創造者(メーカー)
科学ポアンカレ アインシュタイン
絵画セザンヌ ピカソ
音楽モーツアルト ベートーベン

 

検証 (評価)

三種類の検証を論じる

1:理論は経験的事実に矛盾してはならない

2:物理学的外見全体を対象とする

3:新しいアイディアが、他の人にどれだけ影響+があるか。