1980 |
スペクトル・モデル |
ケン・ウィルバー |
「意識の地図」 |
スタニスラフ・グロフ |
グロフのBPMとケンウィルバーの理論を相補的に組み合わせれば、よりリアルな意識の地図ができると考え1図にまとめた。
ウィルバーウィルバーの特徴は、これまで発見されてきた、人間が持ちうる心的経験を階層的に位置づけた「スペクトル・モデル」にある。ウィルバーの理論は時間と共に発展しているが、今は『アートマン・プロジェクト』(Atman Project, 1980)を中心にして見てみよう。ただし、理解しやすくするため若干簡略化してある。
意識・無意識の二分法の枠組をもつユング心理学ではなお十分でないと
スタニスラフ・グロフ(1931〜)意識の地図 | 人間性心理学 | ||||
1 | 前自我的段階 (pre-egoic) | これは、さらにいくつかの段階に分けることができる。要するに、乳児から幼児期の意識であり、自我が未発達な段階である。自分というものを明確に意識していない。基本的には身体感覚のみで動いている。 | 1〜3は精神分析に始まる現代心理学で発見されてきた領域である。 | 基本的分娩前後のマトリックス(Basic Perinatal Matrices) | |
2 | 神話−共同体段階 (mythic-membership) | ある集団に同一化している意識状態。自分と集団を明確に分離していない。ものの見方は呪術的・魔術的である。 | 基本的分娩前後のマトリックス(BPM)とはグロフ独自の理論で、出生に関わる心的経験が大きな位置を占めているとするものである。BPMは4つの段階に分かれ、(1)母親との融合、(2)分離の始まり、(3)闘争、(4)再生の段階があり、それぞれ強烈な心理体験が付随する。 | ||
3 | 自我段階 (mental-egoic) | 他者と異なる自我の意識が明確に現れた段階。現在の人類の標準的な意識水準である。合理的・論理的な判断力がある。 | 自伝的レベル 自伝的なレベルとは、フロイト的な個人的無意識の領域である。 | ||
4 | ケンタウロス段階 (centauric) | 「純粋意識」とも言うべきもの。つまり、自我の制約を超えた意識であり、想念や感情とは異なる「自分そのもの」の自覚。 | 4の段階は、フッサールやベルグソンなどの「純粋意識」の思想家、およびアサジョーリによって明確に捉えられた意識経験といえる。 | ||
5 | 微細段階 (subtle) | 時間空間の制約を超える。元型的イメージの世界。超感覚の発生。 | 5〜7については、それまでの西洋文明における学問の中で語られたことのないものだが(異端的なものとしては、キリスト教・ユダヤ教神秘主義の伝統の中でいわれていた)、東洋の思想的な伝統ではかなり普遍的に見られるものである。近代的学問という文脈の中で、こうした意識領域の存在について正面切って語ったのはウィルバーが初めてである。この部分は、東洋を中心とする伝統――ヒンドゥー教、仏教、道教、イスラム教・ユダヤ教の神秘主義など――から取り入れられたものである。こうした伝統では、人間は誰しも、宇宙との究極的な合一に至るまでに意識を発達させることのできる可能性を持っているという考えで一致している。ウィルバーはそれを仮説として受け入れ、西洋のそれまでの心についての理論と合体させたのである。 | 第三のトランスパーソナルの領域とは、BPMを超え、時間空間を超越した様々な体験をするもので、ニュートン=デカルト的な世界観では全く理解することができない。例えばそれには、祖先の体験、ユング的な集合的無意識の諸要素、いわゆる「過去生の記憶」、他の動植物との同化、テレパシー・透視などの超常現象、などが含まれる。 | |
6 | 元因段階 (causal) | 純粋な形、理念の世界。いわゆる神仏。光明、絶対的な愛など。 | |||
7 | 究極(非二元)段階 (ultimate, nondual) | すべてをこえた「絶対」そのものとの一致。究極的な覚醒。宇宙との合一。 | |||
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Atman Project, 1980)http://www.nct9.ne.jp/mandala/shiso2000/shiso2000-12.html
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