構造主義生物学

 柴谷篤弘、池田清彦

1980年頃ゴールドウィンとウエブスターにより提唱され、その後にこれを元に柴谷篤弘、池田清彦が発展させた。

この考え方は唯物論、機械論に抵触することなく、還元主義を否定する唯一の思想である。

クウォークが何故あるのかは因果的に説明不可能だが、そうした還元的要素以外にも因果的に説明できないものは構造にも認められるのである。

 生物の生理、発生、進化は、物理化学的法則から一意に導くことができない、多少とも恣意的な、細胞内の高分子間の記号的論的なコミュニケーションのルールがつかさどると考える。そのルール変化が最も重要であり、DNAの変異は二次的な要因だと主張する。

構造はそれを構成する要素は下部構造により因果的に決定されるが、具体的に物質や生命として構造物が発現されるときには、要素間の関係性のルールが必要である。非因果的なものと考えるべきである。

構造は全体性と変換と自己制御という3つの性格を持っている。

生命現象はこのような構造が極めて複雑に組み合わさったもの。

この変化は偶然や突然変異ではなく、何らかのルールがある。ニュートン、デカルト的な決定論ではなく、自由ルールである。
こうした構造主義からはネオ・ダーウィニズムとは違った進化論が導き出される

  1. 真に遺伝するのは、DNAだけではなく、DNAを一要素とする部品間の構造という関係性である。
  2. 真に進化を進めるのは、部品のマイナー・チェンジではなく、無根拠に生ずる部品間の関係性の変化にある。
  3. 生物は共生により不連続に新しい構造を定立できる。
     

 

課題:熱力学の 発展と生物学の発展との関係は一度比較してみたいですね。

池田>実は私は、散逸構造論に沿って生物学や進化論を考えなおしてみたいという個人な思惑をもっています。

たしかに60年代の「構造主義」は熱力学の第2領域のレベルで論じていたもので、77年にノーベル賞を受けた散逸構造論を導入して書き直さねばならないはずです。
その時「散逸構造主義」が生まれ「散逸構造生物学」などとネーミングされるのだろう。

関連→システム論史

 

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