閑話休題 |
ニューサイエンス |
かつて、ニューエイジという言葉があった。1960年後半から、70年代にかけて、アメリカの反戦運動をベースに起こった思想的潮流だ。それまでの、「進歩と発展」と否定し、「平和と調和」をスローガンに世界的なムーブメントとなった。
ドラッグ文化やヒッピーをもたらしたが、その歴史的功罪を整理すると、功の面として、「自然回帰」「全体性」「バランス」などがあげられる。これは、現在にも「エコロジー」、「フェミニズム」として生きている。罪の面では、西洋の価値観を否定するあまり、東洋神秘主義にはまり込んで理論を否定してしまったことだろう。
この流れを汲むのが、ニューサイエンスだ。ニューサイエンスは、ニューエイジの流れの一部であったため、その欠陥も以下のようにそのまま引き継いでいた。
@物理の分野では、コペンハーゲン解釈の非局所性、不確定性原理を、神秘主義と結びつけていた。
A意識の解明に瞑想を用いていた。
Bシステム論の部分では、「ホロン」を軸にしていた。しかしホロンは証明の方法論がなかった為、上記の2点ほど、思想的な欠陥ではないが、ホパーの「反証主義」には抵触していた。
この時代にGAIA、ホロン、自己組織化、グローバルブレインなどが次々と表舞台にのぼったが、良質なものは、今日に昇華されて残っている。
そのエッセンスである「科学万能主義の終焉」「文理の融合」「学際的な知」「還元主義の否定」「生命の再定義」などの指摘は、今日の科学の方向性の礎となっている。
特に「複雑系」は上記エッセンスに近い方向性をもっている。ニューサイエンスの病理を取り除いた代わりに第3の検証方法としてのコンピューターシミュレーションを導入したものと捕らると、ニューサイエンスが遺伝子治療を施され、現代に復興したと見てもいいぐらいだ。
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182 ノーベル賞科学者のアタマの中 物質・生命・意識研究まで 青野由利 1999 年 築地書館
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